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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第3章 【壱】
 あれだけの美貌でありながら、これまで嘉宣の眼に止まらなかったのは、腰元見習いであったため、藩主の御前に出ることは許されなかったからだ。それが、つい半月前、見習いから正式な奥女中となり、晴れてお目見えの叶う身になったのである。
 嘉宣は橘乃の活けた金盞花にいたく興味をそそられたようであった。ああいった細やかな心遣いのできる者というのも気に入った原因の一つではあるだろう。
 だが、昨日、嘉宣の前にあの娘を出したのは、やはり失敗だったかもしれない。
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