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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第2章 【序章】
 俺は、どうして、そなたのその心の闇や孤独に気付いてやらなかったんだろう。
 橘乃と一緒に庭を眺めるようになってからも、彼は相も変わらず自分一人のことばかりに気を取られていて、橘乃の心持ちなぞ、ついぞ気にかけたことはなかった。
 もう少し気をつけてやっていれば、橘乃を死なせることもなく、嘉宣は愛しい女を失わずに済んだかもしれない。他ならぬ彼自身が橘乃を死の淵へと追い込んだも同然だ。
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