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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第2章 【序章】
 派手やかな美貌を持つ橘乃には、春に咲く大輪の牡丹こそふさわしいと嘉宣には思えた。だから、庭の片隅でひっそりと花開く女郎花を好きだと言ったあの女に対して、意外そうな表情をして見せたに違いない。
 だが、今ならば、はっきりと言ってやれる。
 橘乃、お前はあの日、自分自身で言ったように女郎花に似ている、と。
 橘乃もまた、彼と同類だった。華やかな外見からはおよそ想像もつかぬほど大きく虚ろな闇を心に抱えていた。
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