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そそり勃たせる人妻
第1章 ゼンギは人混みの中から
それから何分が過ぎただろうか。

短いのに長く感じる手持ち無沙汰で退屈な時間。

性欲を封印した海老原は次第に空腹の食への欲求を感じ始めていた。

(腹減ったなァ)そんなことを思って無防備でいたときに、腰の後ろで組んでいた手のひらに不意に何かが触れてハッと驚かされた。

柔らかくて、低体温なひんやりとした感触はすぐにそれが女の手だと分かったが、「あっ、ごめんなさい」と掛けられた声が麻由美の声だったので余計に驚いた。

「あっ、いいえ」と返答する海老原の言葉を聴くか聞かないかの間で麻由美はスーッと離れていく。

置き去りにされた海老原はまた歩き始めるが、その心はこの出来事に引っかかったままでいた。

こんなところで偶然に手なんかぶつかるもんだろうかと。

そんなモヤモヤ気分から麻由美の方を見ると、当の麻由美はそんなこちらの気持ちを知ることもなく役員の爺ィと談笑している。
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