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脱出小説
第2章 9
絶望的だ。
私はテレポーターの大矢純。テレポート能力者だ。
テレポートとは瞬間移動する能力。
A地点から遠く離れたB地点へと一瞬で移れる。
誰も私を閉じ込めることはできない。
そう思ってた。
今、地球の崩壊を前にして、それが間違っていたことを痛切に感じている。
もうあと1時間ほどで地球は割れる。
粉々に砕け散る。
どこへ逃げればいいというの?
月? 火星?
空気がないよ。死んでしまう。
ISS?
しかし、地球が砕け散ったら、軌道上の宇宙ステーションだって留まってはいられないのではないかしら。
テレポーテーション。
誰もが羨むこの力を持ちながら、私はどうすることもできずにいた。
できることと言えば……。
「ああ……」
「純……」
唇が、触れ合う。
おずおずと、でも、私は勇気を出して舌でヤストを突いてみる。
だって、これが最後なんだもの。
してみたかったこと、全部したい。
ヤストはその想いに応えてくれた。
私の舌先を優しく受け入れ、吸ってくれる。
「んっ……」
せつない喘ぎを交換しながら、水音を増してゆく私たちの行為。
濡れているのはそこだけじゃない。
私の方からヤストの腕をとってそこへと導く。キスをしたまま。
時間はないの。早く。
衣服越しに触れられる。私も衣服越しに触れる。
「うっ……」
軽い呻き声。そのはずみに私の舌が解放される。