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脱出小説
第6章 4

「八方塞がりか……」

 泰人が呟いた。

 泰人は私たちの中で一番年下だ。
 といっても私より二つ下の21才だけれども。

 安戸はひと回り上の30代。

 ――能力のせいで正確な年齢は自分でもわかりませんよ。

 そう言って詳しい年齢はいつ聞いても誤魔化されてきた。
 そして一番年上のクセに、私たちに対しても誰に対しても敬語。

 一見物腰柔らかな紳士風の言葉使いだし、実際見た目もそんな感じなのだが、一緒にいると――特にふたりきりになったりすると、なんだか心落ち着かない、構えてしまう気分になる相手だった。

 はっきり言って私は苦手だ。
 そんなわけで、年齢も近く、性格的にもわかりやすい泰人のほうといっしょに行動することが多かった。

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