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脱出小説
第7章 8
「浦沢君、キミのテレパシーで地上の誰かに助けを求めることはできませんか?」
安戸が泰人に尋ねる。
「試しているけどダメだ。テレキネシスの引き起こした自然災害でみんなそれどころじゃない」
おそらく、津波や竜巻、地震、火山の噴火、そういった諸々の凶事が世界各地で一斉に起きているのだろう。
「助けを求めることは無理ですか……」
それでも、安戸の顔つきにはそれほど絶望している様子は見えなかった。
「このままじゃ、俺たち……!」
痛い。泰人の思念だ。
普段はコントロールして抑えているものの、さすがにこの状況の前には制御を失ってしまったらしい。泰人の絶望、恐怖、不安、そんな負の感情が私と安戸の心を直撃した。
「あっ……ごめん」
私たちのたじろいだ様子に泰人が謝る。
「いいのよ。無理ないわ」
「そうですね……発想を変えましょうか」
唐突に安戸が言った。
「発想を変える?」
「ええ。発想を変えます。何もしないで助けを待つんです」
「そんな! 何もしなかったらコンピュータが……」
私は思わず声を荒げる。
「問題ありません。最悪の事態はすでに回避されています。待っていればいずれ救助がきますよ」
「何を言ってるの、まだ何も……」
「大丈夫です。これから言うプランに協力していただければ」
安戸の言葉は奇妙な自信に満ち溢れていた。
「……スミが鍵となります」