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水蜜桃の願い
第2章 先生と生徒
私の中にあった、こんなにも色々な感情。
揺らされたときは、その都度その気持ちに向き合っていけばいい──そんなふうに今前向きになれているのは、大好きな先生のにおいに……その確かな想いに包まれているからだろうか。心でも身体でもそれを感じられたからだろうか。
想いを込めてじっと見つめれば、……ん? と目で応えてくれる先生。
唇を撫でる優しさはそのままに。
「私……もしかしたらちょっとしたことでまた不安になっちゃったりするかもだけど……そのときは先生に話してもいい……?」
その指先に促されるようにそっと尋ねる。
「……勿論」
静かな、けれど躊躇いのない答えにまた、胸がきゅうっと鳴る。
「面倒だなんて思わないから。
──っていうか、隠される方が困る」
「……ん」
想いを通じ合わせてからの先生は、本当に真っ直ぐに私に向き合ってくれる。
これ以上ないぐらい。
だったら私も、真っ直ぐに受け止められる心を。
もし揺れても、ちゃんと自分でそれを止められるぐらいの強さを────。
そう心に決めながら、声に出さずに、好き、と唇を動かす。
その動きだけで先生の指先に乗せた想いはちゃんと伝わったようで、俺も、と先生は呟いた。
そしてどちらからともなく静かに重ねた唇。
まるで、何かの誓いのようだなって感じていたら、不意に絡ませられた指先。
……もしかしたら先生も同じように感じてくれているのかもしれない──自分からもきゅっと絡めるようにしながら、唇と指先から伝わる熱をそんなふうに嬉しく思った。
fin.