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水蜜桃の願い
第5章  甘やかな願い


……そしてようやく、深く息を吐きつつ、彼女を抱き締めていた腕の力を緩める。

苦しかったねごめん──そう言おうとしたら、今度は透子の方からぎゅっと腕に力を込め俺を抱き締めてきた。


「透子────」


密着させてくる柔らかな身体。
すべすべとした肌に触れる気持ちよさ。
好きな相手に抱き締められるという、抱き締めるときとはまた違った感覚に、思わず、ああ、と息が漏れた。


「先生は……私のだから」


そのまま耳元で落とされた言葉に、ぞくっとした。
だからぜったい誰にもあげない、と続けられ


「────……っ」


たまらず、抱き締め返す。


──透子。


この子が好きで仕方がない。
おそらく、彼女が俺を想うよりももっと、きっと、俺の方が。


「……俺だって」


だからそう、透子を誰にも渡す気なんてない────。


俺の言葉に、ふふ、と微笑みながら彼女が顔を上げる。
そのまま唇を合わせてきて、リップ音と共に離した。
そうしてまた、俺を見る。
恥ずかしそうな、それでいて嬉しそうなそんな表情。
俺からも、同じように口づけた。


愛し、愛される夜はまだ、長い。
そのことを、純粋に、幸せに思う。


どうかこのまま──透子がずっと俺を好きでいてくれますように。
俺のそばにずっと、いてくれますように。


戯れるような口づけを繰り返しながら、心の中でただそれだけを願っていた────。




          fin.






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