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水蜜桃の願い
第3章  記憶の中の彼女


なのに会ったときから透子の様子はおかしかった。
声をかけると、何でもないと口にするものの不安そうにその瞳を揺らす。
どこかぎこちない笑顔。


──俺のせい?


彼女を不安にさせるようなことを何か俺はしたんだろうかと、心がざわめいた。

俺は相変わらず、察することが苦手で。
口にされないとわからなくて。
そんな自分が時に嫌になりながらも、それでも、彼女と付き合うときに思ったことは忘れていない。
自分の気持ちにも、彼女の気持ちにもちゃんと向き合うと決めたことを。


俺のせいなのか。
そうでなくても俺が関係してることなのか──それを尋ねれば、躊躇いつつも彼女の口から発せられた、あの生徒の名前。


──どうして。


言わないでいようと思っていたはずのその名前を、どうして透子が知っているのか────。



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