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水蜜桃の願い
第3章 記憶の中の彼女
生徒からされた突然の告白────。
透子と同じ年のその子は、俺が好きだと伝えてきた。
もちろん俺には今、透子がいる。
だからその告白は断った。
けれど、それでも構わないと──二番目でも、と引かなかった生徒。
『他の子に興味ないから』
思わず口から出た一言。
一瞬にして強ばったその子の表情に、もう少し言葉を選ぶべきだったかと少しだけ思った。
……思ってから、いや──とその葛藤を否定した。
こういうのははっきり言うべきだ。
俺にその気がない以上、彼女とどうこうなることはないのだから。
ならその方が、彼女だって諦めもつくだろうと。
ごめんなさい──実際、そう言って逃げるように教室から出ていったその後ろ姿。
これでよかったんだ、と自分に言い聞かせた。
そうして想うのは、透子のこと。
薄情だと自分でも感じながらも、それは嘘偽りない自分の気持ちで。
彼女にこのことを伝えるつもりはなかった。
俺ははっきり告白を断ったし、その生徒とどうにかなることなどあり得ない。
だから、そう判断した。
いたずらに彼女を不安にさせる必要などないと。