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水蜜桃の願い
第3章 記憶の中の彼女
それらを思い返しながら、横に眠る透子を見つめる。
滑らかな白い肩。
そこから撫でるようにそっと指先でラインを辿る。
短めの髪は彼女の艶かしい身体を隠すことなく、すべてを俺に見せてくれる。
そう、それはとてもきれいで。
指先を戻しながら、再び記憶に意識を戻した。
そして浮かんできたその言葉に──深く、息を吐く。
……まさか透子がそう言うとは思っていなかった。
そう──10年前のあの日のことを透子があんなふうに口にするなんて。
『あのときの私みたいに誰かが、一度だけでいいから、って先生に迫ったら?』
『あのときみたいに先生はそれを受け入れたりするの──?』
……そんなこと、あるわけないのに。
ためらいがちに発せられたその言葉にたまらなくなった。
そんな感情は消してやりたくて。
俺の全部でそれを否定してやりたくて。
でも言葉じゃもう足りなくて。
もどかしさを感じながら──衝動的に激しく奪った唇の感触に沸き上がる一方の、透子への想い。
それは彼女も同じだったのかも知れず、離した唇から吐き出された言葉は激しいほどの俺への想い。そして、不安────。
あのとき、興味なんかなかったはずの自分を受け入れてくれたのは俺が優しいからだと。
だから──また誰かに捨て身でこられたらそれを拒めないんじゃないかと。