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水蜜桃の願い
第3章 記憶の中の彼女
大学卒業後は某企業に就職したものの、教えるということの楽しさを忘れられなかった俺は数年後にそこを退職し、英会話教室の講師として再就職した。
年に数回程度の先輩との関係はその後もしばらく続いたが、『気になる人ができた』との連絡がきてからはもう会っていない。
そういう約束で始めた関係だから、そうなったときも特に何の感情も抱かなかった。終わったんだな──そう、それだけで。
もちろん情はあったから、その相手とうまくいくことを願っていたし、実際そうなったことを知ったときは素直によかったとも思えた。
『忍くんもいつか好きな人できるといいね』
携帯に届いた先輩のその言葉に、俺は苦笑いをしながら『お幸せに』とだけ返した。