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水蜜桃の願い
第4章 動き出した刻
どうぞ、と彼女に導かれるままに上がった室内。
通されたリビングを見渡しながらも考えていたのは、お茶をいれるため対面式の台所の向こう側に立った彼女のことだった。
──どうして、この家に?
ここは、俺が彼女を教えるために通った家ではもちろんない。
なのに、アパートや何かでもないこの一軒家に彼女がいるということは────。
……もしかして、結婚したってこと?
ここはその、相手の家?
なぜか複雑な心境になる。
あんなふうに、俺を『好き』だと言っていた彼女はもういないのかと。
──まあ……当然、だよな。
あれから経った月日の長さ。
彼女はもう、子供ではない。
結婚していても何らおかしくない年齢になっている。
まるで自分に言い聞かせるようにそんなことを思い、別に俺には関係ない、と心の中で苦笑しながらも口にしたその問い。
「え……?」
彼女は戸惑った様子で俺を見る。
繰り返した質問に、あ……とようやくその意味を理解したかのように、首を振った。
それから、ここに住んでいる理由を口にし始める。