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水蜜桃の願い
第4章  動き出した刻


それをぐっと堪え、何か飲むか聞いた。
けれど遠慮する反応に、まあ今まであいつと飲んでたんだろうしな、と思えば嫌みな言葉が勝手に口をついて出た。

え……と、戸惑いの色を見せる彼女の瞳。
俺をとらえてきた視線。
ここにきて初めて合った目。
なのに思わず目を逸らしてしまった。


だめだ──『俺』を作れない。

余裕がないのが自分でもわかる。
どうしても素が出てしまう。

いつもの『俺』になれない。


気づかれない程度の溜め息をついて冷蔵庫を開け、また、ビールを取り出す。
壁に寄りかかりながらそれを飲んだ。


何か話さなきゃいけないのに、何を話したらいいかわからない。
口を開いたら彼女に何を言ってしまうのか自分でもわからない。
この、頭に……胸に渦巻いている感情をそのままぶつけてしまいそうな気がした。


それなのに。


沈黙に耐えられなくなったのか、彼女の方が先に言葉を発した。
自分をここに呼んだのはどうしてなのかと──そう、口にする。


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