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水蜜桃の願い
第4章  動き出した刻


けれどその思惑は、外れた。


途端に俺を非難し始めた彼女。
ひどいと、泣きそうな顔をして。

そして、話がないなら帰る、と────。


……帰る?


まさか彼女がそんな、俺を拒むようなことを口にするとは思ってなくて。


その言葉の意味が頭に入ってきた途端、感情が溢れ出た。

帰したくない。
彼女をここに引き留めたいと。

だってそうだろ──ここから帰って、今度はあいつのもとになんて行かれたら────。


その焦りはそのまま言葉になる。

投げ掛けた言葉。
冷静でいようと思ったけれど、口にする言葉には棘しかないのが自分でもわかった。
あの男に対する負の感情。
そんなのは彼女を怯えさせるだけだってわかってる。
でも一度口に出したら、 もう止められなくなってしまって。

立ち尽くし、俺をただ見つめ、その瞳を苦しげに揺らす彼女は、俺の質問──いや、詰問に声を震わせながらも必死で反論する。
あいつはただの職場の後輩だと言い張る。


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