この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
水蜜桃の願い
第4章 動き出した刻
「……でも向こうはそうは思ってないでしょ。
透子ちゃんのこと、好きだよね?」
その言葉に下唇を噛み、無言で返そうとする。
──図星かよ。
やっぱり気付いてたんじゃん。
相手の気持ちわかってて、誘われたらあんなふうに飲みに行くんだ。
それって向こうに気を持たせることになんないの?
……さっきも思ったけどやっぱり警戒心なさすぎだろ────。
溜め息と共に
「もう好きだって言われた?」
思わず、そんな言葉もこぼれた。
え……? と微かな戸惑いの声が耳に届く。
そしてそのまま彼女は俺から目を逸らし、俯いた。
否定しないってことは────。
「言われたんだ」
ふうん……と何でもないように口にしながら、やっばりなとそう思っていた。
……だからか。
ここに来たときのあの雰囲気は。
何かあったように思えたのは間違いじゃなかったってこと……だろ?
そのとき、俺の視線からまるで逃れたいかのように俯いたままの彼女は、口元を手で押さえるようにして小さな声で言った。
『先生には関係ない』と────。