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第4章 　動き出した刻

「そんな言い方……っ、ずるい……」


彼女は少し涙声でそう言った。
抵抗と言うより、ただ、言わずにはいられなかったとでもいうようなトーンで。


──そうだよ。俺は狡い。


でもそんなのあの時にもうわかってただろ？──と、10年前の狡さを認める告白をしながらも、俺は彼女の身体にふれるのをやめなかった。

背後から吸う首筋。
あ、と声を漏らすと同時に、びくんと反応する身体。


……ほらやっぱり。
彼女の身体は甘く香る。
舌でも、そう感じる。

だから執拗に、舐めた。


彼女は俺の言葉を聞いているのか、それとも聞いていないのか。

もはや、聞く余裕すらないのか。


着ている服の裾に手をかけ、胸上までずりあげていく。

はあ……と、彼女の深く漏らす息さえも甘ったるくて。
頭の芯が溶かされていくような欲情に、ただ満たされて。

止まらない手で、下着をもずらす。
隠される前に自分の手で覆った。
指先に食い込むその柔らかさ。
そして、息を飲むかのような声を微かにあげた彼女。

記憶の中のそれよりも柔らかさを感じた。
あのときはまだ、今と比べたら少女特有の硬さが残っていたような気がする。