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水蜜桃の願い
第4章  動き出した刻


──どうしてそんなに頑なに。


ぎりっ、と胸が軋む。
彼女の徹底したその『拒絶』に。


──どうして。


あんなに俺に好意を向けてきたくせに。
俺が好きだとあからさまに言動に出してたくせに。


──どうして、今さら。


最近だけじゃない。
あのときだって。
そう──10年前だって。
なのに今さら俺を拒むわけ?


……そんなの、狡いだろ。


こんなにも俺の中に入り込んできて。
俺をこんな気持ちにさせておいて。
今さらそんなふうに逃げるとか────。


間近で息を……身体を微かに震わせている彼女を見つめれば、不意に感じた甘く匂い立つその香り。


──それはまるで食らいつきたくなる甘さ。


頭の芯が、くらりと酔っていくような。
そんな不思議な感覚に囚われる。

その甘さが。
彼女が欲しくて──もう、どうしようもなくなった。


そして俺は一番卑怯なやり方をした。
一番狡い言い方で彼女を追い詰めた。


彼女の拒絶は受け入れず。
これからすることを拒ませまいと。


あのとき俺を求めた彼女に、今度は反対の立場を強いて。
彼女の一番痛いところをわざとついて。


そうやって────。



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