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水蜜桃の願い
第4章 動き出した刻
それでもやっぱり、他にどう表したらいいのかもわからなくて。
だから、どうしても認めざるを得なくなるまで──少しずつ。そう思ってたのに。
髪をかきあげようとした両手は途中で止まる。
そのまま吐いた溜め息は、自分への嫌悪を孕んでいて。
「……誰がガキだよ」
さっき、彼女に向かってあいつのことをそう非難した自分。
──反吐が出る。
どっちがガキだって話だよ。
自分を棚に上げて偉そうに。
人のこと言えねーだろ。
は……と自虐的な笑みが漏れた。
自分で自分がわからない。
俺は何をやってるんだと──そうは思うけど、なら何がしたいんだと考えればそれもまた、わからない。
彼女はいつも、俺を真っ直ぐな目で見つめてきた。
俺の話を興味深そうに聞いては、好奇心旺盛な態度で何でも聞いてくる姿。
その素直さには計算など見えなくて。
それは昔も今も変わらなくて。
……先生、と少し語尾を上げるようにして俺を呼ぶその声のトーン。
昔から、好きだった。