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水蜜桃の願い
第4章  動き出した刻


バスルームから出て、向かった先は彼女の横たわる場所。

端に座る。
少しだけ軋んだベッド。
動かない彼女。
その、深い眠り。


──違うだろ?


その寝顔を見つめていたら、不意に、そんな言葉が頭に浮かんで。


その身体も、その心も愛しく感じた。
今だって、そう思える。

一時的な感情なんかじゃない。

たぶん俺は、きっと……ずっと。


──だから、あいつを見たとき胸がざわめいた。

あの挑戦的な目に苛ついた。
あいつについていく彼女の後ろ姿から目が離せなかった。
いつまでもあいつのそばにいる彼女に腹が立った。
だからここに来ることを選ばせた──いや、来るように仕向けた。
あいつの告白に心を揺らした彼女に焦り、そうして、衝動的にこんなふうに無理矢理。
拒むことを許さずに、脅迫めいた言い方で追い詰めて、逃がさないようにして。


……わかってた。
本当はもうずっと前から。
この感情にそれ以外の言葉はないんだろうと。


それでもなぜか、認めることができなくて。
そんな言葉はずっと避けてきたから。
俺はそんな言葉を口にすることなんてないんだろうと思ってきたから。


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