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水蜜桃の願い
第4章 動き出した刻
その自問は、俺のその気持ちすら不確かなものへとまた揺らがせる。
そもそも本当にこの感情はそうなのか──? と。
俺はただ、慕ってくれる彼女を離したくなくて、あんなふうに匂わせる程度の好意を向けられていることが心地いいだけなんじゃないのか?
『彼女に好かれている自分』を手放したくなくて。
だから、無意識に思わせ振りな態度と言葉をしてしまっていることに、それはきっと好きだからだと自分が思い込んでしまっているんじゃないのか────?
考えれば考えるほど、出口のない場所の奥深くまで入り込んでいくかのような感覚がした。
それはあまりにも先が見えなくて。
──もう、いい。
そんな、諦めに似た感情が、考えることに疲れた頭の中を支配し始める。
どうせ彼女が好きなのは『先生の俺』だから、素を知ったら嫌いになるだけだろう。
さっきみたいにきっと俺を拒絶する。
でも俺は、ずっと『いい先生』のままでなんていられない。
きっとまた、こんなふうになる。
彼女が剥き出しにしてくる感情は俺を引きずり込み、冷静ではいられなくさせられてしまうから。
前も……今だって、実際そうだった。
そしてそういう自分はやっぱり変えられはしないのだと、もう思い知らされてもいて。