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第4章 　動き出した刻

──やっぱり無理だ。


彼女と俺は、駄目だと。
10年前感じたそれは、今も変わらなかったとあらためて感じた。


彼女にはきっと、もっとわかりやすく彼女を想ってくれる相手がいい。
俺みたいな奴じゃなくて、彼女の素直さをそのまま受け止めて、同じように返してあげることのできる相手が。
ちゃんと大事にしてあげられる男が。

俺が相手だと、傷つくだけだから。
同様に──きっと俺も。


そして、ああそうか……と今さらながら気づく。


──あいつなら、きっと。


あいつと俺のあいだで揺れていた彼女を、無理矢理俺のものにしたくせに。
あいつとは付き合わないと答えさせて、その言葉に満足もしたくせに。


本当に、今さらだな────。


勝手な自分に心底呆れながらも、あんなふうに好きという感情をあからさまに表に出せるあいつなら、きっと彼女を大事にするだろう。
真っ直ぐで健気な彼女をそのまま、真正面から受け止めてあげられるだろう。
……そんなふうに、思えた。


ずっと、適当な関係しか作ってこなかった俺とは違う────。


その考えに、顔が歪む。


さんざん振り回しまくって。
身体まで奪って。
そしてまた、遠ざけるのか。


……ほんと最低だな。