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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
「……でもそんなの一方的すぎる」
それでも、必死で俺に反論しようとするその姿。
「私にだって言いたいことあるから。
……先生だけ好きなこと言って、そういうの一方的で……ずるい」
言葉を途切れさせながら、詰まらせながら、その形のいい唇を時折噛むようにして、懸命に言葉を紡ぐ。
既に潤み始めている目。
瞬きの回数が多い。
……やっぱり泣かれる、のか。
「今さらでしょ」
もう、そうなることを覚悟した。
けれどその泣き顔には引きずられまいと、貫こうと決めていた態度のまま告げる。
何を言ってもだめなんだと、早く理解してほしかった。
好きだけど、無理だから──その考えに思わず自嘲気味な笑みが漏れてしまい、視線を拒むように彼女から目を逸らして、続ける。
「俺がずるいってわかってた上での関係じゃなかったの?」
それには返事がなく、ん? と、答えを促すために再び彼女を見たものの、その視線は合わない。
少しだけ俯くようにしていた姿。
テーブルの一点をただ、見つめている。
不意に苦しそうに息を吐いたかと思えば、ゆっくりと続けた瞬き。
何を思っていると──考えているというのか。