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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
「だってホテルの部屋番号とか送ってこられたら、来いってことかと思ったし……こんなところに呼ぶくらいなんだから先生も私に何か話があるのかも、って……」
手をついたテーブル。
指先がソーサーにぶつかり、かちゃん、と音を立てた。
はっとしたように、カップに視線を向ける彼女。
黙ったまま、まだ入っている中身を見つめる。
やがて
「……だって私そのときにはもう、また先生のこと好きになってたから────……」
彼女は、その言葉を口にした。
そっと。
よく聞き取れないぐらいの大きさで。
「……でもまだそのときはよかった。
確かに身体の関係から始まっちゃったけど、そんなケースきっといくらでもあるしって思えた……。
これからちゃんと先生に好きって伝えよう、ってそう思ってた……でも」
……ぽたん、と。
俯きながら話していた彼女から、落ちた雫。
ぽたん、ぽたん……と、それは何粒も。
そして目元を指で拭う仕草。
見ていられなくなり、黙ったまま目を伏せた。
それでも、俺に向けられる言葉は終わらない。