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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
もう自分でもわからなくなっていた。
毒のある言葉を吐くたびに、その毒が自分にも回っていくように苦しくてたまらないのに。
……なのに。
「ただ先生のそばにいたかっただけだよ……!」
彼女は、そう言って。
「いつも……いつもいつも終わったら先生はすぐ帰るから……!
それ、少しでも延ばしたくて……だからそうやって私は……っ……!」
そのまま俺に、感情をぶつけてきた。
こんなに突き放しているのに。
傷ついてるはずなのに。
「ねえ先生……!」
俺を必死に見つめるその瞳が揺れる。
それでも、振り絞るような声で
「想う方の気持ちはそんな簡単なものじゃないから……っ……!」
そう、言った。
漏れ聞こえた呻き。
噛んでいる下唇。
俺を睨むように、して。
彼女を見つめながら、その言葉の意味を思った。
そして、ああ……そのとおりだよ、と。
簡単なんかじゃない。
こんなにも俺の心は乱れてる。
わかってる。
言われなくたって、充分理解してる。