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水蜜桃の願い
第5章  甘やかな願い


……でも、そう。
そんなこと、俺だって。

こんなふうに気持ちを乱されるのは彼女だけ。
苦しいのに。
どうしたらいいかわからなくなるぐらいなのに。
それでも離れたくないと何度も思わせられて──。

……いや、今は俺のことなんてどうでもいいんだ。

だめ? って彼女が俺にそう聞くのなら。
俺はそれを肯定するまで。

だってそんな苦しい恋愛は、きっといつか、彼女の負担になるから。
彼女には、もう、苦しんでほしくない────。


そうだ、とあらためて自分に言い聞かせ、彼女の視線から逃げた。


「……何それ」


そのまま、言葉を吐く。


「何なのいったい。
透子ちゃんそれ本気で言ってんの?
……だめでしょそんな理由」


は、とわざと溜め息をついた。
彼女の言葉なんて、全部否定してやる。
俺を求める気持ちなんて、もう跡形もなく、消してやる。


ぎりっ、と痛んだ胸。
無視して、続けた。


「……考えなさ過ぎ。
だから痛い目に遭うんだって」


ぎりぎりと、まるで心臓が悲鳴をあげているかのように痛む。
思わず顔が歪みそうになった。
堪えながら、早くもう──と、もう終わりにしてくれと、そんなことを考える。
でないと、いつまで冷静でいられるか自分でもわからない。


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