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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
だったら、と彼女が口を開く。
だめって言うんだったら、と。
「……もっと先生のこと教えてよ。
否定して終わりなんてそんなのずるい……!」
強い口調のまま、俺に向けられた言葉────。
ずるい、と。
はっきりと口にされ、自分で自分をそう思っていたくせに、また、胸が。
そんな中、突然の感触。
はっと視線をその場所に移せば、彼女が俺の腕を触れていた。
「ねえ、先生っ……」
続けられた言葉と、さらに強く込められた、指先の力。
──何だよ。
じわじわと、その感覚が俺を襲う。
俺が何を言っても、どんなに冷たい言葉を浴びせても、引かずに俺に向かってくる彼女に、戸惑いが隠せない。
「……っ、何なんだよ……!」
自分が、隠せない。
口にした言葉には冷静さのかけらもなかった。
あらわにしてしまった感情に、思わず手を握りしめる。
乱されてしまった自分への苛立ちを彼女にぶつけるように、その視線を向けた。
一瞬たじろいだように見えた彼女は、けれどすぐにまっすぐ俺を見つめ返してくる。
逸らすことなく、俺の非難を受け止めている。
理不尽な、非難を。