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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
「……俺には透子ちゃんは真っ直ぐすぎる。
健気すぎて正直どうしたらいいかわからなくなる。
そしてきっとそんな俺は透子ちゃんを苦しめる。
ずっと適当な関係だけで過ごしてきた俺とは……何て言うか、何もかもが違いすぎると思った」
違わない……と、掠れた声がかろうじて聞き取れる。
違わないよ……とまた、さっきより少しだけ大きい声での否定。
──まだ、だよ。
まだ終わってない。
もう少しだけ……頼むから。
言葉なのか、想いなのか──何か詰まっているかのように苦しくなっている喉。
それでも、息を整え続けた。
「なのにさ……俺から全然離れようとしない」
「だってたとえ身体の関係だけでも、先生を失うよりは良かったから……!」
かぶせてくるように吐かれた言葉。
その言いきりの強さに、感じる想い。
──なぜ、俺は。
ああ、と頷き
「そんなところまで健気だなんて想像もしてなかったよ」
俯いて呟きながら、苦しさにまた吐いた深い息。
それでも喉の詰まりは消えてくれない。
──本当に、なぜ。
俺はその想いを拒まなければならないのだろう。
今さらのように、沸き上がる自分への疑問。
だって俺だって好きなのに。
こんなに俺を求めてくれる彼女の想いを、なぜ受け入れてはいけないと考えてしまうのだろう。