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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
「……透子ちゃんには、俺みたいな男より、もっと透子ちゃんを大事にしてくれる奴の方がいい。
今更だけど、あの彼とか?
……奪うように俺のものにしたくせに。彼とは付き合わないと言わせて満足したくせに。
なのに眠ってる透子ちゃんを見ていたら、そんなふうに考えたりした。
あんなふうに好きって感情をあからさまに表に出せる彼は、俺と違ってきっと透子ちゃんを大事にしてあげられるんだろうな、とか……さ」
気づけば、あのとき彼女の先のことを考えて選んだ選択を……一生、口にすることはないと思っていた気持ちを吐露していた。
その選択は、正しいと。
こうするしかないと思ったあのとき。
けれどいつか、その身体にのめりこめる時間を次第に手放したくなくなっていって、彼女が拒まないのをいいことに俺の勝手でずるずると続けてしまった。
……何度も繰り返す葛藤。
彼女には俺はだめだとその思いを消そうしても、できなくて。
そんな俺の揺れ動く感情がさらに彼女を惑わせてしまうであろうことも、もちろんわかっていた。
気づけば、彼女は必死に首を振っている。
俺を見つめながら。
否定、というその意思表示。
それでも俺は、続けた。
ここまで明かした以上、もう最後まで伝えるべきだと感じたから。
すべてを話してしまいたいと、思ってしまっていたから。