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水蜜桃の願い
第5章  甘やかな願い


けれど、なおも彼女は言い続けた。


「解放してやらないと、って何?」


その口調からは、なぜか落ち着きさえ感じるほどで。
俺をきっとまっすぐに見つめているに違いない彼女の視線を想像した。


「逃がしてあげたって、何?」


繰り返すようにして突き返される、発言。
何を言いたいのかと構えた直後


「私はそんなこと望んでなんかない……!」


叫びにも似た激しさで、俺の言葉を彼女は否定した。

どくん……と心臓が波打つ。

はあっ、と吐かれた彼女の息に促されるように、そっと顔を上げる。
俺を見ていた彼女。
絡まる視線。


「……俺は駄目、って何?」


彼女は続ける。
俺が投げかけた言葉を、俺に投げ返す。

ねえ、とその目が俺に問いかけてくる。


「何でそんなの先生が勝手に決めるの?」

「────……!」


……勝手?


彼女のその問いは、俺がしてきたことにではなく


「決めるのは先生だけじゃない……私もでしょ?」


俺が想像し、考えたそのことに向けられているのか?


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