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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
彼女の手が俺に伸ばされる。
一歩、歩みを進めた足。
「馬鹿にしないで」
もう一歩、俺のもとへと。
その眼差しに、彼女の強さを見る。
逸らせずにただ、受け止めることしかできない視線。
「私はもう子供じゃないよ?
10年前とは違うの。もう大人なんだよ?
……自分のことは自分がちゃんと決めたい」
──頭の芯が、揺れた。
それは衝撃に似た感覚。
同時に、腕にふれてきた彼女の指先。
反射的に引きかけ、けれどその指先はそれを許さなかった。
彼女をそこに確かに感じながら、頭の中で繰り返す言葉。
自分のことは自分で決めると──そう言われ、勝手だと非難するその想いがそこにあるのを知る。
「……お願い、先生」
そして強さを纏ったその瞳が、その言葉と共に崩れた。
泣きそうに、歪む。
いや──実際、彼女は泣いていた。
潤む瞳にそれが見てとれる。
「私は……先生が好き。
どうしたって先生が好き。
先生以外なんて考えられない……!」
その目で、俺を必死に見つめ。
その想いを、口にする────。
「駄目とか、どうとか。
そんなの先生が決めないで!」
ぐっ、と力の入った指先。