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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
その後、約束通り彼女に連絡をして、仕事帰りに待ち合わせた。
まだどこか戸惑っているかのような表情。
無理もない、と苦笑いをしながら促す。
そしてそれは歩き始めて少し経ったときだった。
後ろに引っ張られる感覚を覚え、彼女の方を振り向くと
「……手、繋ぎたい」
俯き加減でそう願われ、ああ……と俺は彼女へと手を差し出した。
きゅっとどこか遠慮がちに握ってくるその手を、俺からも握り返す。
少し冷たい、でも柔らかな感触。
俺の隣に並ぶようにした彼女が、まだ躊躇いがちに俺を見上げてくる。
視線が絡むと、その表情は一気に緩んだ。
ふわりと、笑う。
……久し振りに見た彼女の笑顔に、じわりと胸が熱くなった。