この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
だめなら、変わればいい。
幸せにできるように、これから努力すればいい。
そう考えることがなぜ今までの俺にはできなかったのか──考えられるようになった今、不思議にさえ思える。
ここに来た時と、ここから帰る時。
こんなにも変わってしまった……変えられてしまった考え。
思わず、苦笑する。
すべては彼女がそうしてくれた────。
踏み出してしまった関係に、不安はないとは言えない。
けれど、そう……彼女がこんな俺を変わらず愛してくれるというなら。
ずっとそばに居続けてくれるというなら、そのために俺ができること。すべきこと。
別れ際の、彼女の表情。
その不安も、何もかもを、すべて消したい。
もう、あんな想いはさせない。
今度はそう、俺が。
彼女が俺にそうしてくれたように、俺が、彼女を。
それは、強い感情だった。
自分でも驚くほどに。
ああ……と、自然に声が漏れる。
自分の中に、こんな俺もいたのか──今までわからなかったそのことに、思わず口元が緩む。
──変わろう。
彼女のために。
そして、自分のために────。