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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
……そう、彼女と再会してからは俺は誰とも寝ていなかった。
10年振りに会った彼女への複雑な気持ち。
そればかりに翻弄されていて、他の女のことを考える気にもならなかったから。
たとえ処理だけのことだとしても、そんな気には、とても。
「嘘ついてどうすんの」
けれど彼女は、だって──と、信じ切れていなさそうに口にする。
当然だよな……とその反応には苦笑いしか返せなかったが、それでも、俺の腕にぎゅっとしがみつくようにしてくる姿に、複雑な想いが見てとれた。
「私……先生の彼女になれたって思ってもいいんだよね?」
その呟きは、俺に聞いているようでいて、でも自分に言い聞かせているようでもある。
考えてみれば、行為の前にも聞かれていた。
彼女にしてくれるのかと。
願われていた。
俺の彼女になりたいと。
……そうだよな。
ちゃんと、答えていなかった自分。
態度で察するといったような曖昧な理解で終わるのではなく、はっきり口にされたいという願いを感じた。
だったら俺も、そう──言葉にして伝えなければ。
これからは、この子とちゃんと向き合うと決めたのだから────。