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水蜜桃の願い
第5章  甘やかな願い


少しの後、諦めたかのように腕の中の彼女が力をふっと抜くのがわかった。
一段と柔らかくなったように感じる身体。
ああ……と、こみ上げる愛しさに、胸がきゅっとなる。


「……もう」


しょうがないなあ、と苦笑混じりの可愛い声。
ぴたりと密着させた身体のあたたかさ。
彼女の、におい。
すべてに心も体も刺激され何も考えることなどできない頭の中を、好きだという言葉だけがぐるぐると回っていた。


……10年前から、今までの、透子への深い想い。
そんな頭の──心の中をすべて彼女に見せられたなら、俺の想いへの不安なんて一瞬にして消えるだろうにと思う。


……けれど、そんなことは無理で。


だったら、口にするしかない。
言葉にして、何度も繰り返すしか。
身体でも、何度も伝えるしか。


「……透子だけだから」


本当に。


「信じて」


もう、嘘は言わないから。


「……俺は、透子のものだよ」


こくん、と俺の腕の中で頷く彼女に何度も言葉を繰り返す。
口にするたびに透子は頷き、応え続けた。


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