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水蜜桃の願い
第1章 先生と彼女
先生は、本当に彼女以外の人には興味がないんだろう。
あの言葉は先生の本心だったに違いないと――初めて見せられた態度から、そう思っている。
揺るがない、先生の気持ち。
好きになったら相手に一途な人なんだ、と思えば、また、その相手が自分ではないという事実に、苦しくなり。
そして彼女のことが羨ましくなる。
舞子が、これからうちに来なよ、と言ってくれた。
でも、私はそれを断った。
今日はひとりで、この感情に浸ろう――そう、思ったから。
舞子にはこの前、いっぱい慰めてもらったから。
週末には泊まりに行く約束をした。
だからそのときまでは、ただ、ひとりで。
通話を切ったときには、私はもう決めていた。
もう、先生には会わないと。
教室も近々やめよう。
だって、会えばきっとまた、この心は乱れるに違いないから。
……ふたりのことを、お幸せに……なんて、今はまだとても思えない。
思えないけど……いつかは思えるように、なれるだろうか。
この想いがやがて薄れ、そんなこともあったな、なんて懐かしく思い出せる日がくるんだろうか。
そんなことを思いながら、私は、私の終わってしまった恋をまた、想った。
その苦しさ、切なさ。
そして、どうしようもなさ。
とめどなくこぼれてくる涙に、私のこの感情のすべてが先生への想いそのものだったのだと。
……そう、感じながら――――。
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