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水蜜桃の願い
第2章 先生と生徒
『いつものお店にいます』
──送信、と。
先生へのラインのメッセージ。
既読が付くのはきっと帰り際だろう──そう思いながらスマホをテーブルに置き、バックから取り出した文庫本。
栞を挟んでいたページをめくったときだった。
「あ」
スマホに届いたメッセージ。
先生からだった。
ちょうど授業の合間の時間だったのか、終わったらすぐ向かうよ──そんな文面。
『本読んでゆっくり待ってるから』
そう文を打っていると、注文した紅茶が運ばれてきた。
慌ててスマホを胸元に押し付けるようにして、つい緩んでしまっていた口元を引き締める。
ごゆっくりどうぞ、との店員さんの言葉に軽く頭を下げ、また、スマホの画面を操作する。
『急がなくても大丈夫』
続きを打ち、送信した。
やっぱりまた、緩んでしまう口元。
……しょうがないよね、だって嬉しいんだもん。
そんなふうに自分に言い訳し、スマホを置いて、紅茶の入ったカップとソーサーを自分のもとに引き寄せる。