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水蜜桃の願い
第2章 先生と生徒
フランボワーズティー。
フレーバーティーも、ベリー系も好きな私はこのお店のこの紅茶が大好きで、来るといつもこれを頼んでいた。
カップを手に取り、木苺の甘酸っぱい香りを楽しんだあと、こくりと一口飲む。
おいしい、と心の中で呟き、カップをソーサーに戻す。
再び文庫本を開き、読もうと目で文を追い始める。
けれども何だか頭によく入ってこない。
少し読み進めては、あれ? と意味がわからなくなって、また戻って読み直す。
そんなことをしばらく続けた私は、溜め息と共に本を閉じた。
……もうやめよ。
読むのを諦め、また紅茶を一口飲む。
集中できない理由なんて明らかだった。
……どうしても、先生のことばっかり頭に浮かんじゃうな。
甘く、じわりと微かに胸が……みぞおちのあたりが疼く。
先生を想えば、いつもそうなる。
そんな私の感覚を、見えずともかたちにしたような甘酸っぱい香りが、手にしたカップからは立ち上っていた。
私はわざとその香りを深く吸い込む。
早く会いたい────。
ふふ、とまたつい口元が綻び、回りの人たちに見られないように俯いた。