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水蜜桃の願い
第2章 先生と生徒
「他に?」
聞き返されて頷けば、先生は私からそっと目を逸らすようにして俯いて、ゆっくりと深く息を吐いた。
他に──そう繰り返される呟きと、ぎゅっと強く握られた手。
話すのを躊躇っているかのようなその態度。
「……隠さないで、先生」
その手をぎゅっと握り返した。
「何でもないなら、隠さないで。
でないと、私……いろいろ考えちゃうから。勝手に不安になっちゃうから、だから────」
「わかった」
私の言葉を切るように。
私の顔を横から覗き込むようにそう口にされる。
きゅっと唇を結び、少し顔を上げながら先生と視線を合わせたときだった。
不意に近づいた、先生の顔。
何を思う間もなく、合わせられた唇。
「……っ」
思わず目を閉じた。
数秒後にそっと離され……静かに目を開ける。
至近距離にある先生の顔。
唇は、すぐにまた触れ合えるほどで。
「……断ったから」
そして呟いた先生。
え……? と微かに言葉を返せば
「だから──ちゃんと断った」
また、先生は繰り返して。
私の頭をぽん、と優しく撫でるようにし、そっと身体を元の位置に戻した。
「……告白されたの?」
そんな先生を見つめたまま、その言葉の意味を問いかければ、ああ、と先生はそれを肯定する。