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水蜜桃の願い
第2章 先生と生徒
──そう。
すごく、すごく不安で、こわかった。
あんな可愛い生徒が先生のこと好きかもって思ったら、取られたらどうしようって……こわくてたまらなくなった。
でも、生徒に嫉妬とかそんなこと──先生の仕事そのものを不安視するようなことを口にする彼女の存在なんて、そんなの面倒だって思われるかもしれないと考えれば……やっぱり、それは口には出せない。
「……心配なんてしてないよ。だって信じてたもん」
だから、顔を上げてそれだけを答えながら、もう平気とばかりに口元に無理矢理笑みを作った。
「断ってくれて、ありがと」
そう続けた私を、先生がじっと見てくる。
なに……? と思わず微かな呟きが漏れた。
「……ほんとに?」
そして不意に発せられた先生の指摘に、心臓がきゅっと締め付けられるように痛んだ。
浮かべていた笑みは保ち続けられなくなり、途端にひきつる。
誤魔化すかのようにまた俯いた。
「俺、こんなだから……口にされないと多分気づけないし、気づかなきゃフォローもできない」
そのまま先生の言葉を黙って聞く。
「本当に何でもないならもちろんそれでいいけど。
でも何か思ってるならちゃんと言ってほしい。透子の口から。
……それが俺のことなんだったら、なおさら」
口にされないと気づけないと言っておきながら、もう私の気持ちをすべて見透かしているかのような言葉を。