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最後の一色
第12章 15日目・・・そして夜
15日目の仕事を終え、帰り際になってここまでの給料を渡された。
和紙でできている上品な封筒で手渡してくれた。
さすが芸術家だ、と
和紙独特の手触りを感じながら美紗緒は受け取った。
「ありがとうございます。でも、いいんですか?今いただいてしまって。
仕事がすべて終わってからまとめてで構いませんけど・・」
1ヶ月で返せ、と無茶な事を言った夫はそれを許してくれた。
多少の時間をかけてもいいと言ってくれたのだから、
モデルを無事勤め上げてからでもいいのに。
「いえ、大丈夫ですよ。
少額でも早くに返せれば美紗緒さんだって気が楽でしょう?」
男の気の使い方にまたもや心は揺れ動く。
こんなにも私のことを考えてくれて・・
礼を言う時、思わず声を詰まらせてしまった。
こみ上げるものを押さえることはできなかった。
夫から与えられない安らぎを、まだ出会って2週間余りの男からうけられるなんて。
ありがとうございます・・
かすれる声を絞り出すのが精いっぱいで、ろくに涼輔の顔を見られなかった。
アトリエを出て駅に向いながら、美紗緒はこっそりと涙をぬぐった。