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最後の一色
第12章 15日目・・・そして夜
黙って箸を進める夫の様子を探るように見つめる。
料理に文句などつけることはないが
弾む会話がおかずになることはない。
結婚したての頃は、歳の離れた私を子ども扱いしながらかわいがってくれたのに・・
今ではその存在はごく当然の事だという雰囲気がはびこっていて、
安定は感じても安らぎは・・満足いくほど感じられない。
「どうした?」
康文の声にハッとして顔をあげる。
「いえ・・お味、いかが?」
「うん・・」
そう言ったきり康文は、美味いとも何とも言わない。
もしこれが涼輔だったら・・
よその男の事を考えてしまった後ろめたさからか、美紗緒はむりに明るい声で話しかけた。
「肉じゃが、久しぶりでしょ?腕がにぶってないか心配だったけど」
昨日涼輔のリクエストで作ってきた肉じゃがを、今日は自宅でも夕飯のおかずにした。
「悪くない。いつも通りだ。でもまたなんで肉じゃがにしようと思ったんだ?」
驚いた眼差しを返してしまった。
康文に見透かされたんじゃないかと息をのんだが、彼の疑問を冷静にかわした。
なんとなく思いだしてね、と。