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最後の一色
第13章 16日目
前回よりも蜜の量が多く感じる。
こんな・・ほんの一瞬の出来事にどうしてこんなにも体は返事をかえすのか。
私の中で涼輔という男の肉体が、その肉体が放つ息が、熱が、
思う以上に刺激を与える・・
美紗緒は気づかれないように甘味溢れる息をもらす。
男は、女の筋肉がキュッとしまったのがわかった。
慌てて美紗緒から離れると、
しなやかな丸みをおびる背中をじっと見つめた。
その視線に気づいていたのか、美紗緒は鍋を見つめたまま話し出した。
「こうやって・・
見つめられながら夕飯づくりをすることに幸せを感じていたのは
もう何年も前・・
何ができるか楽しみだって、私の肩を揉んでくれて・・
そんな些細な事がとっても幸せだったのに・・
どうして人って、変わってしまうのかしらね・・」
そう言ったっきり、黙ったまま鍋の中を見つめていた。
煮える音と、窓の外の蝉や虫たちの声だけがキッチンに流れる。
涼輔もか細いため息を、聞かれないようにしてゆっくりと吐き出した。
彼女は今、手放しの幸せの中、というわけではないのか・・
音をたてて椅子を引いた涼輔は、座って女の後姿を見続けた。
今ここで、僕が見ているよ。
そうわかってもらうために、
音をたてて椅子を引いたのだ・・