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最後の一色
第16章 21日目・・湧き上がる欲望
21日目。

アトリエの掃除に取り掛かった美紗緒は、
布のかけられたキャンバスの前で掃除機を止めた。
このキャンバスに私のありのままの姿が描かれている。

ここまでの20日間で私はどんなふうに彼の眼に映ってきたのだろう。
布をめくって見てみたい。

美紗緒は涼輔を呼びに行き、一緒にアトリエへと戻ってきた。

「絵を・・見てみたいの」

ねだるような口調が涼輔の体をうずかせる。
見せてやりたい気持ちもあるが、感情に流されることなく首を横に振った。

「ま~だ、だめだよ」

「ほんの少しだけ、だめ?」

「うん、だめ!完成して完璧な状態で見せたいんだ、モデル本人に。
 だからもうちょっと我慢して、ね?」

機嫌を取るような声音で顔を覗き込むと、
唇を尖らせた美紗緒が愛らしい目を細めた。

「わかったわ、もうちょっと、ね。・・あ・・・」

「ん?どうしたの?」

拗ねた頬は急に、強張った。
弓なりに笑う目は、スッと一文字になる。

「ねぇ美紗緒さん、どうしたの?」


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