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最後の一色
第16章 21日目・・湧き上がる欲望
「あと・・もう少しで・・この仕事も終わり、なのね・・」
震える声のもとをたどるとそこには、明るさを失い凍りついたような顔があった。
あともう少しで完成。
それはすなわち、このモデルの役目も終わるということ。
もうここに来なくてもいい、ということ。
もう・・涼輔との安らぎの時を味わえなくなる、ということ・・
・・涼輔さんと・・会えなくなる・・
そんなの嫌だ、という感情は、自然と体を震わせた。
ここに来て、楽しい時間を過ごして、また明日って、
夕焼け空を見上げながら家路につく。
その繰り返しが今の自分には当たり前の日常になっているのに、それがなくなってしまう。
毎日涼輔の顔を見て、微笑みをかわして、見つめられて・・
「この仕事が終わったら・・もうあなたと会うことはなくなるの?」
涼輔に背を向けたまま、感情を絞り出す。
その時、強い風がアトリエのカーテンを舞い上がらせる。
まるで美紗緒の心の中を表すような強い風だった。