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最後の一色
第18章 29日目
絵の成功の前にこのモデルとどんなふうに日を重ねていくのだろうと、
微量の不安がよぎったことも確かだった。
だが、結果的に・・
画家とモデル、それ以上の感情に取り巻かれ、
なんと言ってもこれほどの作品を描くことができた。
「おおげさかもしれないけど・・」
男の大きな息づかいが美紗緒の耳に届く。
「運命に導かれて出会ったんだよ、僕らは、新宿のあの雑踏の中で」
ほんの少し陽が傾いたあの時間、新宿という人だらけの街で、あの路地を選んで歩いた・・
それを運命の導きと言わずになんと言えばいいのだろう。
人生の道中で、進む道を変えてみようと決心した矢先に出会ってしまった美しい人妻・・
その人妻も静かに口を開いた。
「私もそう思います・・運命に導かれて出会ったの・・だから・・
あなたとの縁は切れないと信じています・・」
言い終えた後の裸婦の眼はここまでで最高のエロスを浮かべる。
よどみなく進む筆は、
確実にその色香をキャンバスの中に閉じ込めた。