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最後の一色
第18章 29日目
「いよいよ明日で終わるのね・・」
このソファの感触、汗ばんだ肌が吸い付いて。
それももう、今日と明日で終わり。
宙をさまよっていた美紗緒の視線はゆっくりとキャンバスの向こうの涼輔に移っていく。
見えないはずの涼輔の顔は、とても悲しげな目をしている、
そう美紗緒の眼には映っていた。
「はじめて・・」
息さえひそめているような涼輔に向かって美紗緒は
一滴ずつ滴を落とすように話し出す。
「初めてこのソファの前で裸をさらした時の事・・あの瞬間ね・・涙が出るまでの間、
頭の中は真っ白になっていて・・なにも覚えていないの」
言葉が切れたのに合わせるかのように、キャンバスの向こうから涼輔が顔をのぞかせる。
「そう・・つい1ヶ月ほど前のことなのに、もうずいぶん昔の出来事のように感じるね」
美紗緒にとっても、そして自分にとっても息の止まるような瞬間だった。