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最後の一色
第19章 最後の一色を足す日


バスルームから出てきた美紗緒はそのままアトリエのソファに横たわりポーズをとった。

キャンバスにむかっていた涼輔はさっそく筆を執る。
ほぼ完成している裸婦に足すのはあとわずかの色だ。


モデルに目をやる。
そこに横たわる裸婦の表情は、期待以上の美しさと妖しさを浮かべていた。

今にも笑い出しそうなほど浮かれた目元、期待を止めない唇、そして
うっすらとした桃色に染まる頬。
ずっとずっと待ち続けてやっと手に入れた快感。
その喜びを、嬉しさを、どうして隠す事なんかできるだろう・・

押さえつけていた欲望は、絶大な効果をもたらしていた。


なめらかに、なめらかに、キャンバスの上を滑る筆。
そして微妙な色合いを作り出す。
恍惚の表情の美紗緒を、しっかりと絵の中に閉じ込め終えると、
涼輔は大きく息をはいた。

・・できた・・完成した・・・

呼吸とともに涙がにじむ。
思い通りの絵を描きあげられた達成感の滴だ。

「・・完成したのね」

静かに体を起し、ガウンを羽織ると涼輔の肩に頬を寄せた。
覗き込むようにして見たキャンバスには・・

「これが・・私・・?」


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