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最後の一色
第19章 最後の一色を足す日
「え?なんです?」
最後の言葉はよく聞き取れなかった。
涼輔は聞き返したが、美紗緒はフッと笑ったまま、繰り返すことはなかった。
「どうぞ気を付けて行ってらしてね。おかえりをお待ちしています・・
春のお庭を見せてもらうためにね・・」
「はい、僕もその時を楽しみにしています」
2人はしっかりと見つめあった。
次に会う日までのために、互いの顔をしっかりと目に焼き付けるために。
「さぁ、どんどん飲んでください。打ち上げっていうのは楽しくやらないとね」
「はい、じゃあ遠慮なく」
もう悲しい顔は見せまい。
また必ず会える。
その想いを胸に、美紗緒はほろ酔い気分に身をまかせた。
気がつくといつのまにか満席になっていた店の中の賑わいが、
寂しさを含む空気を吸い込んでいった。